デジタルカメラの普及にはめざましいものがあります。特に最近の機種では16秒程度から数分までの長時間露光が可能なものがほとんどとなってきて、天体写真にも応用されるようになってきています。
これまで、天体写真というと十数分から1時間もの長い露出を必要とし、その長い時間を正確に星を追尾する精密な架台が必要とされてきました。
しかし、デジカメでは1回の露出はせいぜい1分露出ですから、精密な架台を必要とせず、手軽に撮影できることもあって、デジカメ天体写真という新しい楽しみ方を切り開いてきています。
この写真はカシオのデジカメQV2800UXという少々旧い211万画素カメラを使って撮影しました。簡単にいうと、天体望遠鏡を目で覗く代わりにデジカメを覗かせて撮影したのがこの写真です(実際にはブレを防ぐため、アダプタを使用しています)。オリオン座大星雲中心部に輝く生まれたばかりの4重星トラペジウムとそれをとりまくガス星雲が写し出すことができました。
露出は1分露光を13枚撮影(総露出13分です)し、画像処理を施しています。

≪作者より≫

デジカメによる星雲・星団写真は銀塩写真による作品や冷却CCDによる画像に比べると見劣りますが、その価格や手軽さから最近ではデジカメで星雲・星団撮影に挑む人も増えてきています。非常に熱心に取り組んでいる方もおり、写りが良くない画像をいかに綺麗に見せるか、撮影の仕方(デジカメの設定や組み合わせる光学系),複雑で高度な画像処理,果てはデジカメ自体の改造(赤外カット除去,レンズ除去,冷却化・・・etc)など彼らの努力と工夫には舌を巻きます。
下手に冷却CCDやデジタル銀塩画像処理を使っている人の方が画像処理や絵づくりが下手なくらいで、見習うべきところが多いです。
いかに、階調のない画像から美しく見せるか、どう絵作りを行うか等、ずいぶんと勉強になったと思います。ただ・・・やっぱり冷却CCDの方が楽、というのが本音。ACアダプタやアイピースの光軸出し等、意外と撮影準備に手間もかかり,正確なフォーカスが掴みづらいなど、撮影自体も冷却CCDの方が楽です。なんといっても天体写真専用デジタルカメラですからね。

≪撮影データ≫
■光学系 Takahashi MT160 KASAI PL40コリメート法 
■カメラ CASIO QV2800UXデジカメ ゲイン:ISO320,W/B:自動,シャープ:弱,彩度:高
■赤道儀 Takahashi EM-200USD+Pyxis
■撮影日時 2001年2月1日 
■撮影地:静岡県磐田郡豊岡村
■露光時間 60秒×13フレーム  
■画像処理 StellaImage3
デジカメによるオリオン座大星雲中心部
宇都正明
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